合同会社フェリチータクッチーナ
私が料理の道を志した原点は、母の作るあたたかな家庭料理でした。学校から帰ると台所から漂う匂い、食卓を囲む安心感。何より、母が作るご飯が大好きでした。そしてもう一つのきっかけは、ボーイスカウトで自分が作った料理を振る舞ったとき。仲間たちから「美味しい!」「おかわり!」と笑顔で言われたあの瞬間が忘れられません。料理は誰かの心を温め、笑顔を生む。その喜びが、私の中に深く根付いていきました。
料理とお菓子を専門的に学ぶため、地元を離れ2年間の専門学校に通いました。そして、より多くの経験を積みたいと上京し、東京のイタリアンレストランで働き始めました。スピード感、プレッシャー、刺激的な日々。戸惑いもありましたが、その分だけ視野が広がり、技術も磨かれました。東京での経験が、料理人としてだけでなく「食にどう向き合うか」という姿勢を育ててくれたと感じています。
コロナ禍で飲食業界が大打撃を受け、私自身も一度立ち止まって将来を考えることになりました。そのとき浮かんだのが「病院」や「福祉施設」といった、新しい現場でした。そこで、少子高齢化社会の中で、自分にできる“食を通じた支援”を真剣に考えるようになりました。調理スキルだけでなく、誰かの心や生活を支える「日常に寄り添う料理」。それが、今の出張シェフという事業へとつながっていったのです。
出張シェフとしての私たちは、単なる調理代行ではありません。その家庭ごとの健康状態、生活リズム、味の好みに寄り添った“その人のためだけの料理”をお届けしています。調理の手間を減らすことはもちろん、料理がもたらす安心感や楽しみも一緒に届ける。それがフェリチータクッチーナの目指すサービスです。多忙なご家庭や高齢のご夫婦、子育て中のご家庭に「こんなサービスが欲しかった」と言っていただけることが、何よりのやりがいです。
私たちが開発・制作しているレシピ本は、飲食店や高齢者施設、集団調理の現場でも使いやすい内容に特化しています。例えば作り置きやコスト配慮、栄養バランスなど、現場スタッフの課題を理解した上で構成しています。私たち自身が現場で積んできた経験を、レシピという“形”で広く共有することで、食の現場全体の質と効率を少しでも良くしたい。出張料理で得たノウハウを、社会全体へ届けるための挑戦です。